タバ 28

乾いた葉巻と焦げた木を芯に、ラムの熱とグリーンカルダモンの涼しさを重ねた、ル ラボのマイアミ限定香水です。甘いタバコ香とは違う、夜向きの乾いた煙が長く残ります。

#459 · 2026-08-21

Le Labo / TABAC 28

香水の基本情報と第一印象

ル ラボのタバ 28は、2019年に登場したマイアミのシティ エクスクルーシブです。濃度はオード パルファムで、ル ラボはこの香りを「ボトルに入ったマイアミ」と表現しています。

ただし、描かれるのは青い海と白い砂浜ではありません。中心にあるのは、タバコ・アブソリュート、ウード、シダーウッド、ガイアックウッド、ラム、グリーンカルダモン。乾いた葉巻、焦げた木、酒の熱、青いスパイスが、夜の街を作ります。

第一印象を短く言うなら、ラムの熱が残る、乾いたシガーバー。甘いバニラやカカオを前に出すタバコ香とは違い、木の乾きとくすぶる煙が中心です。タバコの甘さより、葉と木の渋さを求める人に輪郭が見えやすいでしょう。

マイアミでは一年中、世界のル ラボ店舗と公式オンラインでは毎年8月から9月だけ手に入る販売方式も、この作品の一部です。香りを都市へ結びつけるだけでなく、出会える場所と時間まで限定する。街へ会いに行くような香水です。

調香師・ブランドの背景と制作秘話

本作の調香師は、フランク・フォルクルとされています。ドイツに生まれ、幼少期をオランダとフランスで過ごし、パリのイスプカで学びました。現在はディーエスエム・フィルメニッヒがマスター・パフューマーとして紹介する人物です。

ル ラボでは、サンタル 33やテ ノワール 29も、フランク・フォルクルの作品として広くクレジットされています。タバ 28だけの人ではなく、同じブランドで複数の香りを手がけてきた調香師です。

ル ラボは、ファブリス・ペノとエディ・ロスキーがニューヨークで立ち上げ、2006年に最初のラボを開いたブランドです。「ル ラボ」はフランス語で研究所。店内で香りを調合し、購入者の名前、場所、日付をラベルへ記す体験を大切にしています。都市限定の香りでもボトルを派手に変えず、透明なガラス、銀色のキャップ、白いラベルを使う。その静かな外見に、マイアミの濃い夜が収まります。

香りの詳細分析

タバ 28の公式ノートは、トップ、ミドル、ラストへ分かれていません。六つのキーノートが、煙、乾いた木、酒の熱、青いスパイスを重ねます。香りは動きますが、素材を決まった時間順へ固定しない構成です。

中心はタバコ・アブソリュート。ル ラボは、キューバ/ハバナ産のシガーを蒸留したものを思い描くよう促します。乾いた葉の芳香と、火を消したあとに低く残る煙。そのイメージが香りの芯です。

ウードとシダーウッドは、タバコへ暗さと乾きを加えます。深いウードと、シダーの細く乾いた木目。二つがなめらかにくすぶり、甘さではなく木の内部と焦げた表面で角を丸めます。

ガイアックウッドとラムは、香りへ温度を入れます。ラムは砂糖の多いカクテルではなく、乾いた木の中に残る酒の熱。ガイアックウッドがその熱を煙へ変え、低い場所で長く漂わせます。

最後のグリーンカルダモンは、青く涼しいスパイスです。重いタバコと木の中へ、小さな鋭さと抜けを作ります。暗いだけではなく、グリーンの光が一筋入るため、香り全体が平らにつぶれません。

実際につけた人は、ラムとカルダモンの刺激から乾いたタバコと木へ移ると感じることがあります。一方で、最初から最後までタバコと木がまっすぐ続くという感想もあります。比較的長く残ると感じる人がいる一方、肌では早く近くなる場合もあるため、固定の時間より自分の肌で確かめる香りです。

他の香水との比較・ポジショニング

第51回で扱ったメゾン マルジェラのジャズ クラブとは、ラム、タバコ、夜のバーという空気が共通します。ジャズ クラブはバニラと樹脂で甘く丸い屋内のバー。タバ 28は、人が引いたあとの乾いたシガーバーです。同じ酒場でも、空気の甘さと火が消えたあとの残り方が違います。

第60回のトム フォード タバコ バニラとは、同じタバコ香を何として描くかが分かれます。タバコ バニラは、バニラやカカオを含む甘い葉巻箱。タバ 28は、火が消えたあとの木と煙が残る空間です。単に甘さの強弱を比べるのではなく、物としての葉巻箱と、煙が残るシガーバーの違いとして見ると輪郭が明確になります。

第76回で扱ったル ラボのガイアック10は、タバ 28と同じシティ エクスクルーシブです。ガイアック10は東京の静かな木とムスク。タバ 28はマイアミの葉巻とラムです。同じ都市限定でも、香りへ置き換えた街の雰囲気は大きく異なります。

三本は比較する役割がそれぞれ違います。ジャズ クラブとは夜の酒場の情景、タバコ バニラとはタバコの描き方、ガイアック10とは都市表現。三つの角度から見ると、タバ 28の乾いたマイアミがはっきりします。

購入ガイド・価格・おすすめ度

2026年8月20日時点の価格は、ディスカバリー1.5 mlが1,760円、15 mlが22,990円、50 mlが52,250円、100 mlが76,560円です。価格と販売時期は変わるため、購入時には公式サイトで最新情報を確かめてください。

1.5 mlは8月から9月、15 ml、50 ml、100 mlのオンライン販売は9月です。マイアミでは一年中購入でき、50 mlと100 mlは世界のラボ併設店舗で通年リフィルできます。香りの濃度違いは確認できず、すべて同じシティ エクスクルーシブ オード パルファムの容量違いです。

初めてなら1.5 mlから。タバコ バニラのような甘さを想像して大きなボトルを選ぶと、乾きや焦げが予想以上に強い可能性があります。紙の上だけでなく肌へ少量をつけ、ラムの温度、カルダモンの青さ、木の乾きがどう残るかを見たい香りです。

向いているのは、甘さを抑えたタバコ、焦げた木、ラムの熱が好きな人。City Exclusiveという限られた出会い方も含め、一本の背景を楽しみたい人です。灰や紙巻きタバコを連想しやすい人、軽いシトラスや清潔なムスクを求める人は、先に少量で距離を確かめると選びやすくなります。

実際の使用感・シーン・評判

香りの構成と利用者の傾向からは、秋冬、湿度の低い夜、食後に合わせやすいでしょう。夏の湿度の中で煙が面白くなるという感想もありますが、暑い日は量を抑えたいところです。黒、チャコール、焦げ茶のジャケット、レザー、起毛した布と自然につながります。

食後のバー、音楽やアートの場、落ち着いた夜の外出へ。食事中、医療、狭い会議室など、香りに敏感な場所では避けた方が安心です。タバコとウードの暗さがあるため、軽い香りと同じ感覚で多くつけるより、肌へ少量から始める方が香りの細部を見失いません。

肯定的な感想は、甘すぎない、現実的なシガー、乾いた高級木材、ラムとカルダモンの温度、ほかの人とかぶりにくいという方向です。一方で、灰皿、紙巻きタバコ、焦げた木に近い、ラムの甘さが少ない、価格が高いと感じる人もいます。魅力と苦手の理由が、どちらも同じ「乾いた煙」から生まれます。

ウィンウッド・ウォールズの色鮮やかなグラフィティへ、鼻だけで感じる色を足す。ル ラボの言葉を思い出すと、この香りの暗さは黒一色ではありません。タバコと木の茶色、ラムの熱、カルダモンの緑が重なります。秋冬の夜、食後に少量を肌へ。甘さが引いたあとに残る木と煙まで待つと、昼のビーチではないマイアミが見えてきます。

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