No.02 ル・ロン・フォン
明るく乾いたヒノキに土の湿りとホワイトムスクの柔らかさを重ね、肌の近くで軽やかに香るウッディです。名前はベルギーで今も続く家族の苗圃に由来し、日本では親しみやすい「植物園」と紹介されることもあります。
#465 · 2026-08-27
香水の基本情報と第一印象
メゾン・ルイ・マリーのNo.02 ル・ロン・フォン オー・ド・パルファムは、ヒノキ、シダーウッド、パチョリ、ホワイトムスクで組み立てたウッディ香です。スプレーは50ミリリットルと10ミリリットルがあり、同じ名前のパフュームオイルやキャンドル、ボディ製品も展開されています。
日本では「ル・ロン・フォン植物園」と紹介されることもあります。親しみやすさを考えた表現かもしれません。本国公式の「nursery」は、木や植物の苗を育てる苗圃を指します。創業者の祖父がベルギーで始め、現在も続く家族の実在する場所です。
第一印象は、明るく乾いた木です。削りたての木材や新しい木製家具、檜風呂を思わせる人もいます。ただし、ヒノキだけを写実的に見せる香りではありません。シダーウッドの乾いた芯、パチョリの土、ホワイトムスクの淡い甘さが続き、森の景色を肌の近くへ戻します。
一言で表すなら、明るく乾いたヒノキを、土と柔らかなムスクで軽やかにした香り。煙やスパイスを強く出さず、明るい木を近い距離で楽しみたい人に合わせやすいでしょう。
調香師・ブランドの背景と制作秘話
No.02 ル・ロン・フォンの個人調香師クレジットは非公表です。創業者のマリー・デュ・プティ・トゥアールは、香りの着想と方向性を考え、ラボの技術者と要素を組み立てると話しています。本作を彼女一人の調香とは断定できません。
彼女はファッション編集と写真の仕事を経て、ロサンゼルスの自宅でキャンドルを作り始めました。そのキャンドルへの要望が増え、自宅の小さな制作がメゾン・ルイ・マリーへ育っていきます。
ル・ロン・フォンは、幼少期の思い出と結びつく家族の苗圃の名前です。ベルギーの植物をそのまま再現するのではなく、明るいヒノキ、土の湿り、柔らかなムスクで、場所の静けさと家族の記憶を表しています。
ボトルは、ブランドの他の香りと共通する簡素な形です。透明な角型ボトル、白いラベル、暗色の円筒形キャップで、番号と名前が目に入ります。外箱は100% FSC認証紙とされ、ブランドはスプレー部分にPactの専門回収拠点を案内しています。
香りの詳細分析
構造は、トップ、ミドル、ベースの三段階です。トップはヒノキウッド。つけ始めは、清々しい針葉樹、削りたての木、新しい木製デスクのような乾いた輪郭が立ちます。人によっては、墨のような乾きや青い植物の気配を感じることもあります。
ミドルはシダーウッドとパチョリです。シダーウッドが木の芯を作り、パチョリが土や根の湿りを加えます。室内や布では木が前に出て、屋外や湿度のある環境では青い植物や土を強く感じたという人もいます。一本の材木だった景色に、苗圃の地面が見えてくる区間です。
ベースはホワイトムスク。木と土の角をやわらげ、淡い甘さ、粉感、清潔な肌の気配へ落ち着きます。お香を思わせる静けさとして感じる人もいれば、終盤は香りの主張が弱くなったと感じる人もいます。具体的なムスク分子や配合比率は示されていません。白いムスクというノートが、木質をどう丸めるかを追う香りです。
変化は、劇的に場面が切り替わる三幕ではありません。明るいヒノキ、乾いたシダー、土を含むパチョリ、肌に近いムスクの焦点が少しずつ移ります。色に置き換えるなら、明るい木肌から土色、最後は薄い白。涼しい入口から、ごく淡い体温へ向かいます。
他の香水との比較・ポジショニング
コム デ ギャルソンのヒノキとは、ヒノキを中心に、木と静けさ、瞑想的な空気を描く点が共通します。ヒノキはサイプレス、カンファー、パイン、インセンス、モス、ベチバーが作る冷たさ、樹脂、煙へ向かいます。No.02 ル・ロン・フォンは、パチョリの土とホワイトムスクの柔らかさへ。針葉樹と煙の奥行きか、明るい木と肌の距離かで選べます。
5W1Hの09 WOODとは、ヒノキとパチョリで木材の陰影を見せるところが接点です。09 WOODは、ベルガモット、カルダモン、黒胡椒、サフラン、レザー、ヒバを含み、スパイスと革の厚みがあります。No.02 ル・ロン・フォンは四つのノートに絞られ、より透明で静かです。革とスパイスの厚みを求めるか、朝の苗圃の明るさを求めるか。選ぶ景色が異なります。
イソップのヒュイルも、森林、針葉樹、静かな時間を主題にするウッディです。ヒュイルはサイプレス、フランキンセンス、ベチバーと煙の暗さが中心。No.02 ル・ロン・フォンはヒノキの明るさとホワイトムスクの柔らかさがあり、肌へ近く軽い方向です。夜の森と煙ならヒュイル。木漏れ日のある苗圃と柔らかな肌香ならNo.02 ル・ロン・フォンが候補になります。
三作と並べると、本作はヒノキ香の中でも軽さと土、ムスクを選ぶ位置にあります。煙の冷たさ、革とスパイスの厚み、暗い森の深さではなく、明るい木を肌の近くへ置きたい人のための選択です。
購入ガイド・価格・おすすめ度
今回の対象は、アルコールベースのスプレー式オー・ド・パルファムです。50ミリリットルと10ミリリットルを選べます。50ミリリットルは自宅で使いやすく、10ミリリットルは持ち運びやすいサイズです。価格、在庫、配送条件は地域と時点で変わるため、購入前に公式サイトで最新情報を確認してください。
同名のパフュームオイルは、サフラワー油、ヒマワリ油、ローズマリー葉エキスを含む植物油ベースのロールオンです。15ミリリットルと3ミリリットルがあり、香りを肌の近くへ置きやすい使い方です。スプレーは空気へ開く感覚、オイルは塗った場所へ寄り添う感覚。上下関係ではなく、基剤と距離の違いです。
二つを重ね、深さと持続を加える使い方も案内されています。初めてなら、それぞれを単体で試すと違いが分かりやすくなります。肌でも試し、序盤のヒノキから、シダーとパチョリ、ホワイトムスクへの変化を待ってください。
向いているのは、木の香りを日常で使いたい人、冷たい煙やスパイスの厚みより、明るいヒノキと柔らかなムスクを選びたい人です。反対に、檜風呂のような写実性だけを求める人、強い拡散や一定の長い持続を重視する人は、購入前に一日の変化を確かめたいところです。
実際の使用感・シーン・評判
春は、青い木と土の湿りを、新緑や雨上がりの空気へ合わせやすい季節です。初夏や梅雨どきには、ヒノキの清涼感とパチョリの湿りが景色になりやすいという声も聞かれます。秋は、乾いたシダー、土、ホワイトムスクの薄い温かさが自然に立つ季節。真夏の高温多湿では、ムスクの甘さや序盤の鋭さが強まることがあるため、自分の肌でその出方を確かめたいところです。
朝から日中の職場、書店、ギャラリー、在宅作業、読書、庭園の散歩、静かな食事へ。白シャツ、生成りのリネン、オリーブ、ライトグレー、ネイビーなど、自然素材と明るい無彩色にも合わせやすいでしょう。華やかな夜より、木の香りを近い距離で落ち着いて楽しむ場面が似合います。
拡散は肌の近くへ落ち着くという声が多い一方、中程度に広がると感じる人もいます。持続も、早く弱まる、2〜3時間後にムスクへ移る、一日残ると幅があります。肌、布、屋外で、木、青い植物、土のどこが前に出るかが変わることも。固定時間より、自分の肌と環境で見た方が確かです。
好意的な人は、檜風呂、新しい木製家具、ログハウスを思わせる清々しさ、甘さの少なさ、日常での使いやすさを挙げます。一方で、最初のヒノキを鋭く感じる、変化が少ない、控えめすぎるという人もいます。写実的なヒノキを求めるか、ヒノキから土とムスクへ移る静かな空気を求めるか。最後まで待つと、この香りを選ぶ理由が見えてきます。


